また米国だけを対象とした話です。米国では、カバー曲に含まれる著作権使用料金は、曲をリリースするアーティストあるいはレーベルが著作権所有者に支払う決まりとなっています。
日本では、若干異なります。このページの最後の部分で、日本についても、少し説明していますので、参考にしてください。
注意:2021年1月1日から、米国では音楽近代化法(Music Modernization Act = MMA)が発効したことで、Spotifyなどの主要なストリーミングサービスで米国でメカニカルライセンスの強制許諾の対象となる楽曲のカバー曲を配信するためのメカニカルライセンスが不要となりました。
今後もメカニカルライセンスが必要となるのは次のケースとなります:
- CDやビニール盤など物理メディアの流通(無料を含む)
- 自前のウェブサイトでのダウンロード販売(無料を含む)
- 自前のウェブサイトでのオンディマンドストリーミング(無料を含む)
- 自前のウェブサイトでの着メロ・着うたの配信(無料を含む)
- 扱う原盤の数が5,000以下でThe Mechanical Licensing Collectiveとの包括契約を結んでいないサービスによるダウンロード販売、着メロ・着うたの配信、オンディマンドストリミーング(無料を含む)
- 扱う原盤の数が5,000以上でもThe Mechanical Licensing Collectiveとの包括契約を結んでいないサービスによるダウンロード販売、着メロ・着うたの配信、オンディマンドストリミーング(無料を含む)、あるいは強制許諾の対象とならないカバー曲のライセンス(派生作品、歌詞の変更、サンプリングなど)
今後も次のようなケースではカスタムライセンスが必要です:
- 同期ライセンス(シンクライセンス) - YouTube、映画、ビデオ、DVDなど、
- 印刷用ライセンス - 歌詞、楽譜、表示
- グランドライセンス(グランドライツ) - あらゆる種類の演劇での利用に対する権利、そして
- マスターライセンス(マスターライツ) - 著作権保護された録音のあらゆる種類の利用
どのストリーミングサービスが音楽近代化法によってメカニカルライセンスの個別取得が不要となるかは、まだ発表されていません。現時点では、Apple Music、Spotify、Deezerが対応するとわかっています。それ以外のサービスについては、随時確認が必要となります。
カバー曲を販売するには、2通りの方法があります。自分で処理するか、Harry Fox の SongFile あるいは EasySongLicensingのようなエージェンシーを使ってメカニカルライセンス(楽曲使用権)を得るかです。SpinApp Japanでは、日本のアーティストが簡単にカバー曲を海外で販売できるようにEasySongLicensingと提携しています。EasySongLicensingから日本語でメカニカルライセンスを購入する方法については、こちらのページを参照ください。
他人の曲をカバーして録音し、それをインターネット上で提供しようとするなら、録音したカバー曲を一般に公開する前に、以下の処理をすべて完了していなければなりません!
アーティストがある歌をカバーして録音した場合 (つまり、著作権所有者の同意の下、アメリカ国内でリリースされた歌を演奏して録音した場合)、米国の法律により、その録音を商業的にリリースする権利が与えられます。米国の法律では、カバーした歌の著作権の所有者が、これを妨げることはできません。
著作権法では、ダウンロードおよび CD の販売に関して、いわゆる「強制使用許諾 (Compulsory License)」というものを用意しています。これは、法律によって示された手順を踏めば、誰でも、カバー録音を CD として、またはインターネットを通じて流通させられるというものです。ただし、この強制使用許諾は、アメリカ国内における販売に対してのみ有効です。ストリーミングや条件付きダウンロードなどにマスターを使用する場合は、強制使用許諾の対象にはなりません。これらの場合は、パブリッシャーから個別のライセンスを取得する必要があります。
以下は、個人が強制使用許諾を取得し、カバー曲をインターネットを通じてアメリカ国内のエンド ユーザーにデジタル流通させるための手順の詳細です。
■まず著作権者(パブリッシャー)を特定してください。
最初のステップは、曲の著作権の所有者が誰かを特定することです。これを一般に、パブリッシャー(音楽出版社)と呼びます。
最も簡単に特定する方法は、次の団体で作詞作曲家およびパブリッシャーを検索することです:
・BMI
・ASCAP
・SESAC
・U.S. Copyright Office
このような権利の所有者は、一般的にパブリッシャーになっています。また、曲の権利の所有者と、その曲のある特定のレコーディングに関する権利の所有者は同じとは限らない、ということを覚えておいてください。言い換えると、レコードレーベルが、楽曲の作詞作曲に関する著作権所有者である場合はほとんどありません。レーベルでは、通常、録音された音源の権利、つまり原盤権だけを所有しています。そのため、まず、原盤権の所有者ではなくて、楽曲の権利を持つパブリッシャーの名前を調べる必要があります (パブリッシャーがなければ、個人で権利を持っていることもあります)。
同じ名前の歌がたくさんあるので、著作権を調べたい楽曲そのものかどうかを正確に特定するように気をつけてください。 上記の Web サイトから所有者を検出できない場合は、著作権局 (Copyright Office) の記録をオンラインで検索してください。
徹底的に検索しても権利所有者を見つけられなかった場合は、著作権局に、少額の出願料 (現在のところ、$12.00) と一緒に趣意書 (letter of intent) を送り、届け出ることができます。 著作権局に趣意書を送る場合は、著作権局のウェブサイトを参照して、正確な宛先住所と現在の出願料を確認してください。
趣意書を提出する際の手続きについては、米国著作権局の「回状 73 (Circular 73)」に説明があります。ここで PDF ファイルが入手できます。このファイルには、ここに書いた説明の基本となる内容が書かれていますので、このファイルをダウンロードして読むことをすべてのアーティストにお勧めします。
趣意書では、必ず次の決まりを守らなければなりません:
強制使用許諾を求めている曲 1 曲につき 1 通の趣意書を、ダウンロード販売を始める 30 日前までに送る必要があります。 趣意書は、書留または配達証明書付き郵便で送る必要があります。そして、次の内容を、英語で、必ず記入してください。
1. 件名またはタイトルは、“Notice of Intention to Obtain a Compulsory License for Making and Distributing Phonorecords”(レコードの作成および頒布のための強制使用許諾取得意向の申告の意味)と明記します。
2. 申告者の本名
3. 使用しているすべての偽名および変名 (芸名、バンド名など)
4. 曲の流通による収益から 25% 以上の利益を所有する個人の本名 (売り上げ収入をバンドで分配する場合は、それぞれのバンドメンバーの本名を記入)
5. 会計年度 (通常は、1 月 1 日~12 月 31 日)
6. 正確な実際の住所:私書箱は認められませんが、それ以外に住所の表記方法がない国の場合にだけ私書箱を記入
7. 楽曲のタイトル
8. その曲の作詞作曲者の氏名
9. 予定している販売形態(インターネット上で流通される音楽ファイルは、「Digital Phonorecord Delivery: DPD」と言います)
10. 発売開始予定日
11. カバーを行う演奏者あるいはバンドの名前
12. 自著
音楽出版社が 2 社以上登録されている場合は、その内の1 社に強制メカニカルライセンスの趣意書を送れば十分です。ただし、版権所有者のいずれかがアメリカ以外の国にある場合は、すべての版権所有者に通知書を送るのが一番よい方法です。
■次に著作権使用料報告書と著作権使用料を送ります。
インターネット上でカバー曲を発売したら、著作権使用料の月次明細書を毎月 20 日以前に送り、著作権使用料を支払う必要があります。
月次明細書は、書留または配達証明書付き郵便で送る必要があります。また、次の内容を、英語で、必ず記入してください。
1. 懸命あるいはタイトルは次のように明記します。 「Monthly Statement of Account Under Compulsory License for Making and Distributing Phonorecords」(レコードの作成および頒布のための強制使用許諾に基づく月次決算明細書の意味)
2. 明細書が対象とする期間 (年と月)
3. 申告者の本名
4. 使用しているすべての偽名および変名 (芸名、バンド名など)
5. 曲の流通による収益から 25% 以上の利益を所有する個人の名前 (売り上げ収入をバンドで分配する場合は、それぞれのバンドメンバーの本名を記入)
6. 正確な実際の住所:私書箱は認められませんが、それ以外に住所の表記方法がない国の場合だけ私書箱を記入
7. 楽曲のタイトル
8. その曲の作詞作曲者の氏名
9. カバーを行う演奏者あるいはバンドの名前
10. レコーディングした曲の演奏時間 (長さ) (分 : 秒)
11. DPD の数、つまりそのカバー曲がダウンロードされた回数
12. 通信障害のためダウンロードされなかった DPD の数
13. ダウンロードが中断あるいは失敗したため、再度転送された DPD の数
14. 著作権使用料支払額の合計 (結局ダウンロードされなかった回数を除いた DPD の総数×法定著作権使用料率 (下記を参照))
15. 「I certify that I have examined this Monthly Statement of Account and that all statements of fact contained herein are true, complete, and correct to the best of my knowledge, information, and belief, and are made in good faith」(「私は、この月次決算明細書を見直し、ここに記載された内容のすべてが、私の知る限りにおける情報および信用にかけて本物で、完全、かつ正確なものであり、誠意を持って作成したものであることを保証いたします」の意味)と明記
16. 自著
また、暦年の終わりには、年次決算明細書を送る必要もあります。月次明細書の内容と基本的に同じですが、米国の認可を受けた公認会計士 (CPA) による証明が必要です。
●法定著作権使用料料率
現在(2006)の著作権使用料の法定料率は、曲が5分以下の場合は、1曲売れる毎に 9.1¢ となっています。
曲の再生時間が5分を超えると、1分毎に 1.75¢ となります。なお1分以下は切り上げです。
* 5分未満 = 9.1¢/コピー
* 5から5分59秒まで = 10.5¢/コピー (6分× 1.75¢)
* 6から6分59秒まで =12.25¢/コピー(7分× 1.75¢)
* 7から7分59秒まで = 14¢/コピー(8分× 1.75¢)
* それ以降も同様に計算
法定税率に関する最新の情報については、著作権局(Copyright Office)のこのページで確認してください。
■重要な注意点
パブリッシャーから、強制使用許諾は取り扱っていないので、Harry Fox Agency に問い合わせるように言われることがあるかもしれません。Harry Fox Agency では、ほとんどの音楽出版社の DPD に関するメカニカルライセンス(楽曲使用権)を取り扱っていますが、アーティストには、上記の手順に従いさえすれば、強制使用許諾を取得できます。
法律はあなたの味方であることを忘れないでください。 法律によって、使用許諾を得る権利が与えられています。 上記の申告書を適切な音楽出版社に送った瞬間から、あなたは権利 (使用許諾) が得られます。
送付した申告書が著作権法の第 115 条に準拠している限り (上述)、音楽出版社は、著作権使用料の支払を受け取る以外にすることがありません。 あなたは音楽出版社からの返事を待つ必要さえありません。
■その他の注意点
任意の交渉を行うことによって、著作権使用料率を引き下げるか、または明細書を送付する頻度を減らすことができる場合があります。 標準的な第 115 条から離れて条件を交渉した場合は、音楽出版社または HFA からメカニカルライセンスを取得する必要があります。
カバー曲の物理的なコピー (例えば、CD) を販売したい場合は、同様の強制使用許諾を取得する必要があります。Harry Fox Agency を通じて、ほとんどのポピュラーソングの許諾を利用することができます。 販売する物理的なコピーが 500 ~ 2,500 枚なら、Harry Fox Agency オンラインの songfile.comから強制使用許諾を取得することができます。
あらゆる販売形態に関する強制使用許諾の詳細については、著作権局のウェブサイトを参照した上で、各自の弁護士に相談してください。
回状 73 (Circular 73: レコードの作成および頒布のための強制使用許諾 )、回状 75 (Circular 75: 著作権局使用許諾課)、M-200 (第 115 条タイトル 17 のチェックリスト) など、大変参考になる印刷物を著作権局から利用することができます。
強制使用許諾または著作権所有者との同意がないまま、カバー曲を流通させた場合、その音源の強制使用許諾を取得する資格は得られません! さらに、著作権侵害として民事刑罰あるいは刑事罰の対象となる場合があります。
合法的にカバー曲を流通させるために、上記の手順にそのまま従ってください。
■次のファイルをダウンロードして印刷あるいは保存することをお勧めします:
* How to Investigate the Copyright Status of a Work(作品の著作権の状態を調査する方法)
* Compulsory License For Making and Distributing Phonorecords(レコードを作成および頒布するための強制使用許諾)
* Notice of intention to obtain a compulsory license(強制使用許諾を取得するための趣意書)
* Royalties and statements of account under compulsory license(強制使用許諾に基づく著作権使用料および計算書)
* Checklists of Required Information(必要な情報のチェックリスト)
* Mechanical Copyright Royalty Rates(メカニカル著作権 (Mechanical Copyright) の著作権使用料率)
米国著作権局 (U.S. Copyright Office) のウェブサイトで上記のファイルや他の有益なファイルが参照できます
■相談できる専門家たちの連絡先
音楽の権利に関する部分は、芸術とは無関係であり、ビジネスと法律の世界なので、以下に紹介する人たちは無料で手伝ってはくれません。けれども、皆さんこの分野に関しては、ミュージシャンに無理のない値段で、プロフェッショナルなサービスを提供しています。
* C. Christopher Clark, Esq.
Shumaker, Loop & Kendrick, LLP
128 S. Tryon Street, Suite 1800
Charlotte, North Carolina 28202
(704) 945-2152
cclark@slk-law.com
* Richard D. Rose - Attorney
9 Music Square South, 3700
Nashville, TN 37203
615-330-7673
richard@copyrightcafe.com
* Joyce Dollinger
Dollinger, Gonski & Grossman
One Old Country Road, Suite 102
P.O. Box 9010
Carle Place, New York 11514-9010
(516)747-1010
jsydnee@aol.com
■カバー曲を日本でデジタル販売したい場合
日本で JASRAC および NexTone と提携しているiTunes Storeなどの主要なオンライン配信サービスを通じて販売された楽曲に含まれる著作権使用料金は、iTunes Japan などの配信サービス自体が売り上げから、該当楽曲の使用料を直接 JASRAC あるいは NexTone などの著作権使用料徴収代行団体に支払います。
こうして支払われた著作権使用料金は、著作権使用料徴収代行団体から、権利を持っているパブリッシャーあるいは作詞者作曲者などに支払われます。
つまり、日本で JASRAC あるいは NexTone 信託曲および管理楽曲のカバー曲をこうした主要なストアでデジタル流通させる場合、登録された著作権情報(著作者とパブリッシャの情報)が正しければ事前にアーティストが何か手続きを行う必要がないということです。
ただし、販売を開始する前に、その曲が事前の許諾なしで国内の主要なオンライン配信サービスでデジタル販売できるかを、それぞれの使用料徴収代行団体で必ず確認しておいてください。
一方、こうした国内の使用料徴収代行団体は海外を管轄外にしていますので、海外で信託曲および管理楽曲が販売されても使用料を直接徴収できません。つまり海外でデジタル販売するためのメカニカルライセンスは、著作権者、著作者、パブリッシャなどから直接取得あるいは購入するか、海外で取得あるいは購入する必要があります。海外でのライセンスの購入方法については、このページを参照ください。
目次