ストリーミングが音楽のプロデュース方法をどう変えたのか、あなたは何をするべきか
この記事は、2019年5月13日にCD Baby DIY Musician Blogに掲載された記事、”How streaming is changing the way music is produced, and what you can do about it”の翻訳です。
By George Goodrich
ストリーミングプラットフォームでの成功は、これまでと異なるやり方で決まります。そこでミュージシャンはストリーミングに対応するために音楽を作る方法を変化させつつあり、同時に業界全体も変化せざるを得なくなっています。
今日、音楽は凄まじい速さで消費されています。今や1日に私が聴く音楽は、40曲にも登ります。私が若かった90年代には音楽をラジオで聴いていましたが、1日に聴くのはせいぜい8曲から10曲で、仮にアルバムを買ったとしても次の一ヶ月間はアルバムに収められた同じ10曲から12曲を繰り返し聴いていたのです。
皆さんもご存知の通り、CDとデジタルダウンロードの売り上げは絶滅に向けて徐々に落ちています。代わりにストリーミングサービスが花開きつつありますが、そこには毎日アップロードされる膨大な量の新しい音楽を処理するために複雑な仕組みとアルゴリズムが採用されています。例えば、Spotifyのようなストリーミングサービスでは、あなたの曲がどこまで拡散し、何人のリスナーに届くかをアルゴリズムが決定します。利用者のリスニング体験を最適化することを目的とするその仕組みが、今や曲の書き方、構造、そしてプロデュース方法にも直接影響を与えています。
注意: ここに書かれた内容は、私自身がSpotifyでたくさんのアーティストと仕事をした際に気づいたことです。以下のヒントは、すべてのアーティストに適応するものではなく、すべてのアーティストが商業的な目的で自分の作品を変化させなければならないということではありません!
それでも、みなさんが自分の音楽をもっとストリーミングに適したものにして再生回数を増やしたい場合は、以下のヒントが助けとなるでしょう。
これまで長い間、典型的な曲の構造は次のように ABABCB でした(訳注: これは欧米の場合で、日本のポップスの構造は若干異なります)。
しかし、現在では多くの曲が BABABCB ようにサビから始まります:。
なぜでしょう? リスナーの興味を素早く惹きつけ、アーティストは曲が始まるとともにそのキモの部分をリスナーに提示できるからです。もう長いイントロはあり得ません。イントロの代わりにリスナーはいきなりフックに触れ、その後は曲が進むうちに何回かフックが繰り返されるのを心待ちにします。
“Better Now” – Post Malone
“Please Me” – Cardi B & Bruno Mars
このヒントには議論の余地がありますが、知っておいて損はありません: Billboard Hot 100の曲の平均の長さは、2000年には4分だったものが、2008年には3分30秒以下まで短くなっています。
注意力の続かない若いリスナーのために、すべてのアーティストが曲を短くしなければならないわけではありません。実際のところ、すでに大勢のファンがいる場合、曲を短くするとファンは離れていくでしょう。でもヒップホップ、ポップス、あるいはインディポップスのアーティストは、曲を短くすることで繰り返し聴かれることになり、再生回数は増え、結果としてSpotifyの公式プレイリストに採用されるチャンスが増えるでしょう。
ただし、曲を短くする最大の目的は、リスナーにとってアルバム全体をストリーミング再生しやすくすることなので、あえて曲を短くするのはアルバム(あるいはプロジェクト)をリリースする場合に限ってください。余談ですが、Spotifyはシングルよりもアルバム(プロジェクト)を優先します。アルバムをリリースした方が、Spotifyのレーダに引っかかりやすいのです。
Spotifyでは、曲をリリースする度に自分にとってどんなやり方が効果があり、どんなやり方が効果がないかを試すことができますから一曲リリースして終わりということがあってはなりません。ストリーミングで成功しているアーティストに共通するのは、非常に厳密なリリーススケジュールを立て、かつ守っているということを覚えておいてください。
多くのアーティストが1曲のシングルに集中し、見栄えの良いミュージックビデオも作って意気揚々と発表します。でも、そのリリースが期待通りに成功しないと意気消沈し、その意気込みも続きません。そんなことにならないように、まず年間のリリーススケジュールを立ててください。3ヶ月ごとにシングルをリリースするということでも構いません。そうすれば、フォロワーと月間のリスナー数が増え始めた時、彼らにさらに聴いてもらうべき曲が手元にあるでしょう。そんな1曲が突然に注目される日のために、事前に計画を立てて守るのです!
• プロジェクトのクリエーティブな方向性(デザイン、マーケティング上のフック、など)
• スケジュールを守るために必要なクリエータの確保(例えば、バンドメンバー、スタジオ、エンジニア、など)
• リリース前に必要なリソースのチェックリスト(アートワーク、メタデータ、など)
• 音楽のプロモーションに必要なリソースのチェックリスト(プレイリストへの宣伝、PR、ビデオ、など)
Spotifyの素晴らしい点の一つは、2人のアーティストで曲を作ると、その両方のアーティストプロフィールに該当曲が表示されることです。
月間リスナー数とフォロワーがあなたより多い、ある程度の人気があるアーティストと協力するのは、Spotifyでの露出を高める良い手法です。なお、どちらのアーティストもいわゆる「フィーチャード」アーティストではなく、曲の主体となるアーティスト(トップレベルアーティスト)として登録するように注意してください。
一つの例として、Date Night/Chris Robleyがコラボレーションした「True North」を紹介しましょう。下図にある通り、この曲のクレジットに二人の名が並んでおり、曲は二人のプロフィールにそれぞれ表示されます:
出し惜しみしない – 注意を払ってくれる時間が短くなっていますから、サビを使ってできるだけ早くリスナーの心を掴まないと聴き続けてくれません。
曲の長さにはこだわらないでください。短くても構いません。実際のところ、ストリーミングプラットフォームでは短い方が好まれます。
成功への道筋を計画してください。クリエータのスタッフを確保し、スターになるための準備を整えましょう。もちろん夢が実現するとは限りませんが、より多くの曲をリリースすることは悪いことではありませんから、必ず計画通りに進めましょう!
最後に、他のアーティストと協力しましょう。再生回数が増えるだけでなく、インスピレーションも生むでしょう。
ストリーミングが台頭してきてから、あなたは曲を変化させていますか?
-以上-
By George Goodrich
ポピュラーミュージックの新たな構造とサウンドを理解すればストリーミングの再生回数を増やすことができる。
ストリーミングプラットフォームでの成功は、これまでと異なるやり方で決まります。そこでミュージシャンはストリーミングに対応するために音楽を作る方法を変化させつつあり、同時に業界全体も変化せざるを得なくなっています。
今日、音楽は凄まじい速さで消費されています。今や1日に私が聴く音楽は、40曲にも登ります。私が若かった90年代には音楽をラジオで聴いていましたが、1日に聴くのはせいぜい8曲から10曲で、仮にアルバムを買ったとしても次の一ヶ月間はアルバムに収められた同じ10曲から12曲を繰り返し聴いていたのです。
皆さんもご存知の通り、CDとデジタルダウンロードの売り上げは絶滅に向けて徐々に落ちています。代わりにストリーミングサービスが花開きつつありますが、そこには毎日アップロードされる膨大な量の新しい音楽を処理するために複雑な仕組みとアルゴリズムが採用されています。例えば、Spotifyのようなストリーミングサービスでは、あなたの曲がどこまで拡散し、何人のリスナーに届くかをアルゴリズムが決定します。利用者のリスニング体験を最適化することを目的とするその仕組みが、今や曲の書き方、構造、そしてプロデュース方法にも直接影響を与えています。
注意: ここに書かれた内容は、私自身がSpotifyでたくさんのアーティストと仕事をした際に気づいたことです。以下のヒントは、すべてのアーティストに適応するものではなく、すべてのアーティストが商業的な目的で自分の作品を変化させなければならないということではありません!
それでも、みなさんが自分の音楽をもっとストリーミングに適したものにして再生回数を増やしたい場合は、以下のヒントが助けとなるでしょう。
曲の構造を変化させる
これまで長い間、典型的な曲の構造は次のように ABABCB でした(訳注: これは欧米の場合で、日本のポップスの構造は若干異なります)。
平歌 | サビ | 平歌 | サビ | ブリッジ | サビ |
A | B | A | B | C | B |
しかし、現在では多くの曲が BABABCB ようにサビから始まります:。
なぜでしょう? リスナーの興味を素早く惹きつけ、アーティストは曲が始まるとともにそのキモの部分をリスナーに提示できるからです。もう長いイントロはあり得ません。イントロの代わりにリスナーはいきなりフックに触れ、その後は曲が進むうちに何回かフックが繰り返されるのを心待ちにします。
サビで始まる曲の例:
“Better Now” – Post Malone
“Please Me” – Cardi B & Bruno Mars
曲を短くする
このヒントには議論の余地がありますが、知っておいて損はありません: Billboard Hot 100の曲の平均の長さは、2000年には4分だったものが、2008年には3分30秒以下まで短くなっています。
注意力の続かない若いリスナーのために、すべてのアーティストが曲を短くしなければならないわけではありません。実際のところ、すでに大勢のファンがいる場合、曲を短くするとファンは離れていくでしょう。でもヒップホップ、ポップス、あるいはインディポップスのアーティストは、曲を短くすることで繰り返し聴かれることになり、再生回数は増え、結果としてSpotifyの公式プレイリストに採用されるチャンスが増えるでしょう。
ただし、曲を短くする最大の目的は、リスナーにとってアルバム全体をストリーミング再生しやすくすることなので、あえて曲を短くするのはアルバム(あるいはプロジェクト)をリリースする場合に限ってください。余談ですが、Spotifyはシングルよりもアルバム(プロジェクト)を優先します。アルバムをリリースした方が、Spotifyのレーダに引っかかりやすいのです。
リリース戦略を立てる
Spotifyでは、曲をリリースする度に自分にとってどんなやり方が効果があり、どんなやり方が効果がないかを試すことができますから一曲リリースして終わりということがあってはなりません。ストリーミングで成功しているアーティストに共通するのは、非常に厳密なリリーススケジュールを立て、かつ守っているということを覚えておいてください。
多くのアーティストが1曲のシングルに集中し、見栄えの良いミュージックビデオも作って意気揚々と発表します。でも、そのリリースが期待通りに成功しないと意気消沈し、その意気込みも続きません。そんなことにならないように、まず年間のリリーススケジュールを立ててください。3ヶ月ごとにシングルをリリースするということでも構いません。そうすれば、フォロワーと月間のリスナー数が増え始めた時、彼らにさらに聴いてもらうべき曲が手元にあるでしょう。そんな1曲が突然に注目される日のために、事前に計画を立てて守るのです!
リリース戦略には、次が含まれていなければなりません:
• プロジェクトのクリエーティブな方向性(デザイン、マーケティング上のフック、など)
• スケジュールを守るために必要なクリエータの確保(例えば、バンドメンバー、スタジオ、エンジニア、など)
• リリース前に必要なリソースのチェックリスト(アートワーク、メタデータ、など)
• 音楽のプロモーションに必要なリソースのチェックリスト(プレイリストへの宣伝、PR、ビデオ、など)
似たアーティストとのコラボレーション
Spotifyの素晴らしい点の一つは、2人のアーティストで曲を作ると、その両方のアーティストプロフィールに該当曲が表示されることです。
月間リスナー数とフォロワーがあなたより多い、ある程度の人気があるアーティストと協力するのは、Spotifyでの露出を高める良い手法です。なお、どちらのアーティストもいわゆる「フィーチャード」アーティストではなく、曲の主体となるアーティスト(トップレベルアーティスト)として登録するように注意してください。
一つの例として、Date Night/Chris Robleyがコラボレーションした「True North」を紹介しましょう。下図にある通り、この曲のクレジットに二人の名が並んでおり、曲は二人のプロフィールにそれぞれ表示されます:
次が、ストリーミングプラットフォームであなたの音楽の成功のチャンスをより高めるための4つのヒントをまとめたものです:
出し惜しみしない – 注意を払ってくれる時間が短くなっていますから、サビを使ってできるだけ早くリスナーの心を掴まないと聴き続けてくれません。
曲の長さにはこだわらないでください。短くても構いません。実際のところ、ストリーミングプラットフォームでは短い方が好まれます。
成功への道筋を計画してください。クリエータのスタッフを確保し、スターになるための準備を整えましょう。もちろん夢が実現するとは限りませんが、より多くの曲をリリースすることは悪いことではありませんから、必ず計画通りに進めましょう!
最後に、他のアーティストと協力しましょう。再生回数が増えるだけでなく、インスピレーションも生むでしょう。
ストリーミングが台頭してきてから、あなたは曲を変化させていますか?
-以上-